先日、相続の登記をしました。
といっても、司法書士にとって相続の登記の依頼が来るというのは、当たり前のことで、不動産の所有者が死亡したので、相続による名義変更をしたいといったことは良くあります。

しかし、私が先日やった、相続の登記は会社の登記についてのものでした。
実はこれは非常に珍しいものなのです。

司法書士のところに依頼の来る登記の仕事は大きく分けると、不動産に関する登記と、会社その他の法人に関する
登記の2つに分けられます。業界内では、一般的にそれぞれ不動産登記、商業登記と言ったりします。
このうち、不動産登記については、相続の登記の依頼というのはごく普通のことです。
しかし、商業登記については、相続の登記の依頼というのはほとんどありません。

というのも、世の中の会社の大部分を占める、株式会社や有限会社には、相続に関する登記の制度がないのです。
株式会社や有限会社の取締役が亡くなったからといって、取締役の地位が相続されることはありません。
また、株式会社や有限会社の株主が亡くなると、株式を相続した人が新たな株主になりますが、そもそも株主が誰なのかということは登記事項ではありませんので、株主の相続登記もありません。
したがって、当然そのような依頼もありません。

私が、今回受けた依頼は、
合資会社
の社員の相続登記でした。
合資会社の社員というのは、株式会社の株主と取締役を合わせたような存在で、無限責任社員と有限責任社員とがあり、それが誰なのかは登記されます。
そして、合資会社の社員の地位は相続することができるのです。
そのため、社員が死亡すると相続の登記をすることになるのです。

私にとっては、合資会社の社員の相続登記は初めての経験でした。
しかも、会社法施行前の旧商法時代に発生した相続についてのものだったこともあり、かなり苦労してしまいました。
しかし、依頼人はもっと困っていたことと思います。
世の中に存在する合資会社の数は非常に少なく、仕事の依頼も少ないですが、こういう会社が存在して、活動している以上、必要な登記手続きをやることは、登記の専門家である司法書士の存在意義である、と今回の仕事をして私は強く感じました。



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